革新 製品説明webページをパッケージ化し、もぎとり君を「J-Tube」にリニューアル


海外営業用の外国語動画サービス「海外商談もぎとり君」は、制作本数が50製品ほどでしたが、それなりに目的を果たしました。


しかし、「動画」という、一度アップロードしたら内容の改変が難しいコンテンツの性質上、映像内での数値情報や取引条件の説明には限界があり、私は各社から預かった仕様書や検査資料をPDF形式の「Product Sheet」にまとめて、問合せがあった外国人に個別に返信するというスタイルでしばらく対応しました。


そして、ある日、ふと気付いたのです。

「中小企業の経営者は概して作文が苦手で、説明が分かりにくい。自分に分かることしか書いておらず、資料が商談に使えない」
「思いや物語、精神論、日本人にしか分からない説明が大半で、全部読んだところで、具体的な判断を下せる材料が乏しい」
「日本企業にとっては『バイヤーに売ること』が仕事でも、バイヤーにとっては『自国で売り切ること』までが仕事だ。製品説明はその本質的なゴールを描いてなされなければならないが、ほとんどの企業が『良い商品だからよろしく』程度の内容ばかりじゃないか」

 

 

多くの中小企業は、総合商社に憧れて手法や用語のマネから入ったのか、頭の中は大容量通信がなかった時代の「コレポン(応答)」のような古い発想で海外と向き合っていました。


「その成分は動物性ですか?→いえ、植物性です」、「賞味期限は何ヶ月ですか?→半年です」、「支払条件は何ですか?→L/Cです」などと、時差が半日くらいある国との間で古い「一問一答形式」のコレポンを毎日繰り返すという低速コミュニケーションなのに、「海外から動物性の成分について聞かれた」、「支払条件はよく聞かれるぞ」などと、まるで就活を始めたばかりの学生のようなメンタリティで、「海外と接触した表面的な体験」をノウハウのように語っている経営者の姿を見て、「中小企業は、コミュニケーションというものを考えたことがないのではないか?」と感じました。

 

下手な説明には「基本要素の質問」が来る。上手な説明には「買う前提の要求」が来る。価格、サイズ、納期、証明書の有無、使用方法、保証などの「全体像や細部の把握のための質問」が来るとは、初回接触時の情報提供が稚拙な証拠だ。
バイヤーが自分で全ての要素を考慮に入れ、利益計算が終わって想定市場や売り方が見えた場合には、「四つの要求」しか来ない。どうして多くの企業はコミュニケーションそのものを分析せず、質問と要求の区別さえ考えないのか?島国であるとは、いかなる国際貨物もサイズを問わず、全て空輸か海上輸送となり、物流が極めて不利ということだ。そうしたコストを吸収して輸出で利益を出すための必須条件の一つは「買う側の要求から商談がスタートすること」だ。下手な説明と売り込みは利益を減らす。
うまくいく商談では、必ず「買う側」の問いが多い。商売の完成イメージがあり、細部を調整、確認したいからだ。いっぽう、失敗する商談では、「あなたの国では売れそうですか?高いですか?類似製品はありますか?どんな商品が人気がありますか?」と、「売る側」の興味や不安に基づく単調な質問が続く。買う側に問わせる準備ができるまでは対面する必要はないのは商談の常識だが、もしかして多くの中小企業は、英語での会話に集中するあまり、そうしたコミュニケーションの基本を忘れているのではないだろうか?
数名の社長は英語らしき言語を話しているが、単語(Word)と用語(Term)の区別を自覚できておらず、話せば話すほど商品の価値を下げ、誤解と混乱を招き、質問への対応ができていない。どうしてこんな単純な意識の壁を自覚できずに「海外、海外」と言うのか?
「無料サンプルはあげるもの」と誤解している経営者が多い。サンプルとは「欲しがらせるもの」だ。あらゆる商談は「先にお願いしたほう」が不利になる。つまり「買いたい」と先に相手に言わせたら勝ちで、売り込みに行ってサンプルを配りまくる行為自体が失敗のスタートだと、なぜ企業も行政も経済団体も展示会運営会社も気づかないのか?本気で研究したら、サンプル一つから得られる情報は実に多く、何が相手の自発的なサンプル要求の要因となったかを分析することで独自のノウハウが生まれる。なぜそう考えないのか?
海外対応の情報が未整備で、バイヤーが自国で売り切った後の最終利益を計算できないなら、それは商品ではなく「モノ」に過ぎない。商品として提示するなら、非対面状態で全ての要素の確認と計算が終わり、儲かるかどうかを判断できる情報を備えていなければならない。
「少子化、市場縮小」は日本の問題にすぎない。はっきり言って外国人にとっては日本人が減ろうが、日本の自治体が破綻しようが、日本が衰退しようが貧しくなろうが、どうでもいいことだ。仕事が相手の問題解決である以上、製品や事業は相手の問題解決を志向して企画されなければならないが、多くの企業は「国内が厳しいから海外」という短絡的な思い付きで、自分の問題解決のために海外を目指す。スタート地点が最初からずれている。

こうして私は、国、地域、バイヤー種別、品目、輸出形態などの項目を緻密に分類し、「もぎとり君」を通じて、「各国のバイヤーが最初のメールで書いたこと、要求したこと、問合せたこと、何通のやり取りでサンプル購入に至ったか、何がきっかけで買いたいと言ったか、サンプル購入から何回の、どんなやり取りで本契約になったか・・・」などを数百通のメール、資料、文面、単語のデータベースを作ることで分析し、国、地域、品目、規模、バイヤー種別を問わず、共通して当てはまっていた傾向や過程を抽出し、それを「3分野38項目」の製品説明ノウハウとしてシート化しました。

 

 

それに伴って、バイヤーが最初に接触する動画は「4章22項目3分40秒」を標準フォーマットとし、動画で伝えるべき情報と、動画を見た後にWebページで確認すべき情報を秩序立てて分類し、不勉強なバイヤー、冷やかしのバイヤー、せっかちで説明を読み飛ばしたバイヤーには、「返信しません」と明記しました。そして、非対面で「質問することがない」という状態までwebページでの説明を要約して充実させ、「4つの要求」のうちどれかをチェックしなければ、「送信ボタン」を押せない設定にしました。


つまり、「①要求が明らかではない、②取り扱いイメージが不鮮明、③FOC(無料)サンプル請求」のバイヤーは、「相手にしません」と宣言したのでした。

この大きな変更により、海外から届くメールそのものは減りましたが、問合せの質は向上しました。

 

動画とwebを効率的に連動させなければ、従来の「海外展示会、英語カタログ印刷、現地渡航、宿泊、通訳手配、市場調査、コンサル料・・・」と多額の資金、労力、時間を要していた海外展開の初動段階の作業を通じて行っていた説明が、「会う前に、メール一通もやり取りすることなく、格安、ハイスピード、低リスクで完了する」という仕組みが生まれたのです。つまり、「相手から明確な意思表示を受けた後、初めてその国、その企業個別の要望に対応する」と、対面のタイミングを従来の古い手法と逆転させたパッケージサービス「J-Tube」が生まれました。

この仕組みは九州各地で好評を博し、売れた商品、まだ売れていない商品様々ではあるものの、コストダウン、時間短縮、使い勝手の良さをご支持いただき、まもなく福岡県外にも広がって、私は県外に説明や取材、撮影、録画に行くようになりました。


しかし、九州域内ならまだよいものの、北陸、四国、東北の企業様からもお問合せが来始めて、「これは、一人の力では到底無理だ」と思い、各地の友人やお客様に代理店としての業務をお願いすることに。代理店でもカバーできない地域の企業には、製品説明シートと動画素材のリストをお送りし、研修動画まで作って、海外バイヤー目線の素材収集と情報整理をお願いしました。

ところが、またしても大きな壁に直面しました。
地方の中小・零細企業の経営者や職人さんは私より10歳~30歳も年上で、概してデジタル機器の扱いがとても苦手です。ワープロやフィルムカメラ全盛期の感覚でデジタル機器を使っている方も多いため、素材を撮影、録画、整理する際にトラブルが頻発したのです。

赤の太字で「HDサイズ(16:9)、ヨコ写真」、「タテ厳禁」、「ワンテーマで、不要な要素がない写真・動画」と、読み飛ばせないほどはっきりとご説明したのに、送られてくる写真や動画は、サイズ、方向、解像度、鮮明さ、内容が使えないものばかりで、中には「紙のチラシの写真を撮影した写真を送ってきた」という会社もあった。
動画は「明るく、簡素に、重要な工程や作業が海外の人にもしっかりと理解できるように」と何十回も強調したのに、届いた動画は暗く不鮮明で、手ブレしまくりで、自然食品なのに画面の奥でタバコを吸っている人が写っていたり、おしゃれな食品なのに工場の汚い一角が写っていたり、接近して重要作業を録画すべき個所が工場全景を録画していたりと、「どうしてこうも、指示から外れた素材ばかりなのか?」と、何度撮り直しをお願いしたか数え切れないほど。
「写真と動画はフォルダ別に分け、順番が分かる番号をファイルに付け、『何をどうする工程』などと短く説明すること」と何度も伝えたのに、届いたUSBメモリからフォルダを開くと、全ての写真と動画ファイルが自動的に割り当てられた数字のみのファイル番号で雑に入れられ、結局私が全てを確認し、分類しないといけない。ファイル整理には人柄が表れることを痛感させられた。
結局、デジタル機器に不慣れな人に「フルHD、アスペクト比率、解像度、鮮明度、ワンテーマ」という言葉で作業を説明しても、ほとんどの人が理解できないし、一回理解しても、実際の撮影や録画の頃には忘れており、完璧に揃った素材を受け取ったのは、5件もなかった。

つまり、「デジタルコンテンツがあれば、海外展開のスピードは格段に速くなるのに、その、デジタルコンテンツを作るための素材自体が一年たっても揃わない」という、想定していなかった問題に直面したのでした。「この動画は、海外でバイヤーさんがプレゼンで使うんですよ。汚く、不鮮明で、不揃いで、見にくく分かりにくい映像だと、バイヤーが恥をかき、御社の製品のイメージも悪くなりますよ」と何十回も伝えたのに、いざ撮り始めたら撮ることだけに意識が集中し、自分の興味や知識だけで撮っていることが、動画から如実に伝わってくるのです。

代理店さんや社長さんが慣れるまで、ある程度は修正や撮り直しもあるだろうと覚悟しており、その対策もいずれノウハウ確立につながるからいいだろう、と楽観視していたら、いつの間にか、また「もぎとり君」の頃のように、たった数枚の重要な写真を撮るためだけに、私が毎週県外まで行き、どんどん睡眠時間が減り、交通費の出費が増えていきました。

このように、地方の中小企業の海外展開の課題は、英語だけではありませんでした。
国際取引経験の少なさだけでもありませんでした。
海外市場の知識不足だけでもありませんでした。
「相手が求める情報を、相手が必要な形でスピーディーに揃えられない」という、もっと基礎的な部分にも課題があったのでした。
国が違い、文化や生活スタイルが違う外国人に対しては、写真や動画による説明は必須ですが、その「素材」さえ満足に集まらないのですから、レシピ(動画の脚本)はあっても、いつまでたっても調理(動画編集)に着手できません

そこで私を再び挫折させかけた現実は、「経営者や担当社員の年齢を考えれば、語学同様、デジタル機器の知識や腕前が今後向上することも、おそらく期待できない」ということでした。
3年間J-Tubeという形でこの仕組みを運営してみて、地方の中小企業が海外に輸出を行うには、商品以前に、それを十分に説明する材料さえ集まらないという現実からスタートしなければいけないという現実に直面し、「一人だけ、めちゃくちゃ優秀な人を採用し、その人に取材、撮影、録画を一任しようか」と本気で考え始めました。


「もぎとり君」が海外からの多すぎる問合せメールで限界を迎えたように、J-Tubeもまた、日本側のデジタルコンテンツ素材の収集効率の悪さから、一つの限界を迎えたのです。
そうして、①取材と英訳、②撮影と録画、③動画制作という三つの分野を、海外バイヤーが欲しがる形で短期間で収集、整理、コンテンツ化できる能力を備えた人を探し始めました。始めたら諦めない性格の私も、ついに、「もう、自分が全てをやるのは無理」と悟ったからです。


④進化 17年間、顧問を務めている学生サークルでの発見と感動へ