奮闘 国際技術移転事業で見えた限界から「海外商談もぎとり君」を開始


久しぶりに訪れたマレーシアは昔の面影を残しつつも大きく変貌しており、私はボスニア人の友人、マレー人の友人が経営する貿易会社、建設資材販売会社から、久しぶりに「貿易」の案件の打診を受けました。


久しぶりとはいえ、若い頃に体で覚えた業務だけに、国際取引の能力や感性はほどなくして取り戻すことができ、多くの外国企業の友人が、(日本人としては珍しいと言われる)「外国語が上手、貿易に詳しい、交渉がうまい、対応が速い、技術や製品知識が豊富、文章が分かりやすい」という資質を評価してくれ、わずか数ヶ月で東南アジア各国に日本製品を調達したいという現地企業のゆるやかなネットワークが生まれ始めました。

 


多くの外国人が様々な理由から、日本人とのコミュニケーションに苦労し、日本企業との交渉で失敗していました。みんなの体験談、苦労話から見えてきたのは、「日本製品は品質や技術は優れていても、いかに『買いにくい』か」ということでした。


私は建設資材、省エネ技術、機能性素材、生活用品など取扱品目を少しずつ広げつつも、途上国の問題を中小企業の技術によって解決する国際技術移転の仕事に特に惹かれ、この分野にのめりこんでいきました。

ところが、当然ながら、そんなに簡単にうまくいくものではありませんでした。
東欧や中東の案件は、貯金をほぼ使い果たしながら、どちらも最終的には契約には至りませんでした。


理由は様々ですが、その過程でお世話になった内外の多くの素晴らしい方々の製品、理念、手腕、姿勢を観察しながら、私は「このようなやり方は、海外の顧客にはもちろん、日本の中小企業にはそもそも合っていないのではないだろうか?」と考えるようになりました。
あれこれ思いを巡らせるうちに、海外出張が増えた私のもとには、いつしか九州各地の企業から「今度の出張で、よかったら現地で反応を確かめてほしい」とサンプルが毎週送られてくるように。


私は幸い、20歳から海外業務の経験があり、多言語話者であるために、日本語や英語しか分からない人の働き方や苦労、障害について考える機会がありませんでしたが、多くの日本企業は英語が苦手で、海外事情にも疎く、旅行以外で海外に行くことは少ないため、私の「海外バイヤーの買い付け支援」というアプローチとは真逆の「日本からの海外販路開拓」という発想を当たり前として国際取引に臨んでいました。

 


日頃お世話になっている方々から預かったサンプルなので、現地に行くなら少しでもお役に立てればと、最初は善意から現地で紹介していたのですが、気づけば毎回カバンに占めるサンプルの容積が増え、また、「怪しい粉(建材)」や「気持ち悪い液体(水質浄化剤)」が空港で検査され、説明が長引いて飛行機に乗り遅れそうになることもありました。
そうして、「さすがに、もう勘弁してほしい」と感じたことが、下記の事柄でした。

いまどき、「動画」を見せれば先に製品概要がつかめるのに、どうして日本企業は現地や日本で実物を見せたがるのか?
価格や輸送条件といった「数値情報」は、バイヤーに渡してこそ相手の経験に基づいた確度の高い市場調査が無料で可能になるのに、どうして日本企業は大金を投じて自分で市場調査したがり、提示価格、計算基準、計算方法を隠し、「最後に」見積りを出したがるのか?
「経済成長率、所得推移、自動車保有台数、出生率、都市人口比率」などの大企業用のマクロデータを集めたところで、中小企業が自社の海外営業ツールとして使いこなすには無理がある。やろうとしていることに対して、集めている情報や採用しようと思っている手法がかみ合っていない企業が多すぎるのではないか?
製品の作り手たる日本企業にとっての最高価値は「良いこと」だ。輸入して販売するバイヤーにとっての最高価値は「儲かること」だ。ゆえに、買い手が「儲かるかどうか」を最初に計算できない製品説明には情報としての価値がない。どうして日本企業はこのシンプルな前提に無自覚で、デパ地下で試食させるような「品質と技術で勝ち、ビジネスで負ける」という海外営業を何年も繰り返して、大金を垂れ流しているのか?
「会って、試食して、交渉して、成約を目指す」という日本企業の展示会出展姿勢はもはや時代遅れだ。海外は「儲かると思ったら会い、細部を確かめる」なのに、日本企業の展示では、対面してなお、バイヤーが購入判断を下せる材料をほとんど提供できておらず、自腹で無料サンプルを配りまくり、名刺交換と記念写真で満足している。「対面」のタイミングが、決定的にずれているのではないだろうか?

とにかく、中小企業の海外営業は、その準備段階から相互の認識形成プロセスの設計、商流計画に至るまで、多くの部分が未熟かつ粗末で、良い製品の価値が伝わる機会が大きく阻害されており、もったいないと感じました。また、さらに深刻な問題と感じたのは、多くの企業がそうした前提に自社では気づけず、表面的なノウハウや印象的な体験談に依拠し、特定の人脈に頼ったり、ブームに便乗したり、権力者の口利きで売り込んだりと、再現性や発展性のない古い手法で海外市場の開拓を目指している姿でした。

 

 

そこで私は、見た目では怪しくて用途や性能が分かりにくい製品や、言葉で理解できてもイメージできない製品、ありきたりで希少性や優位性が外見では伝わりにくい製品について、社長さんたちに「写真10枚撮ってください」、「1分でいいから、実証実験映像をYouTubeにアップしてください」、「お持ちの映像があったら編集するからください」とお願いし、デジタルコンテンツによって旅行カバンを軽くして、各国でタブレットPCを使って「デジタル紙芝居」を行うべく、「海外商談もぎとり君」と名付けた海外営業用の外国語動画サービスを開始しました。

変化は早く、そしてはっきりと感じられました。
例1:太陽光パネル
例2:節水器具

「同じ映像を見て製品を理解した」というスタート地点を共有できたことで、ともに何を目指すかというゴールを共有しやすくなった
単純、簡単、一般的な外見の製品でも、製造工程や検品、品質管理の独自性を映像で説明することで、「値下げ要求」が減った。
「何がどう、なぜよいか」という付加価値発生の根拠を視覚化できたことで、バイヤーさんの現地営業が大幅に効率化された
問題解決手法、導入方法、使用方法、製造工程、メンテナンス方法などをバイヤー視点で論理的に脚本化してコンテンツを配列したことで、相手が「動画視聴後に具体的に知りたいこと」への集中と関心を集約でき、対面前のプレ商談のスピードと効率が向上した。
製品に関する用語自体になじみが薄く、語学力では解決できない要素が画像、動画、図表の共有により正確に情報化、知識化、イメージ化され、「日本企業が海外バイヤーに対して行う説明の苦労」がなくなり、「バイヤーが現地で売るための説明方法の確立」が主目的となり、エンドユーザーのためにバイヤーさんと日本企業がチームとして働く意識を醸成できた。

このように、たった数分の動画を通じて、相手の第一印象を正確な情報と知識で根拠づけてあげられたことで、地方の中小企業が海外展開の初動時に遭遇してきた課題や、投じてきた無駄な労力、時間、資金が大幅に削減され、同時に現地視察や直接対面では得られなかった多くの収穫が無料で得られ、スピーディーに共有されるようになりました。


そうして、私のYouTubeチャンネルには、24時間世界中からメールが来るように。
予想外の反響に直面して見えてきた問題への対応でパンク状態になり、「もぎとり君」もまた、限界を迎えたのでした。